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「あ、これってあれだ!」とつながった瞬間を語ってみる、ちょっと変わった書評ブログ。

#5 めちゃくちゃスゴい人がいるので紹介します。金原瑞人『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』

こんにちは。kazuです。

今日は、翻訳家・金原瑞人氏について語ります。

翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった

翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった

 

翻訳家という仕事を知っていますか?

 いきなり失礼な質問をお許しください。知っている人が大半なのは重々承知です。
簡単に言えば、「外国の文学作品などを日本語に訳する仕事」でしょう。

では、質問を変えます。

あなたは、翻訳家の名前を何人あげられますか?

今(2017年4月11日22:48)、グーグル先生に「翻訳家 有名」と尋ねてみたところ、一番初めに出てきたのは、映画の字幕翻訳を主にこなしていらっしゃる戸田奈津子さんでした。

あとは、『ハリー・ポッター』の翻訳をした松岡佑子さんでしょうか?

翻訳家ではありませんが、村上春樹氏が『The Catcher in the Rye』(邦題『ライ麦畑でつかまえて』『キャッチャー・イン・ザ・ライ』など)を訳したことも何年か前に話題になりました。

翻訳ものが好きであったり、英文学関係の勉強をしていたりしなければ、パッと浮かぶ翻訳家はこれくらいではなかろうか、と思います(私がそうでしたから)。

 

金原瑞人というスゴイ人

 私が今日紹介したい金原瑞人さんも、翻訳家です。今は法政大学の教授をされているそうです。(参考サイトhttp://www.yomiuri.co.jp/adv/hosei/voice/vol07.html

そしてとってもすごい人。

何がそんなにすごいかってその翻訳した本の数ですよ。
その数なんと400冊以上!!!!!!

最近の代表作は、共訳ですが、この本。

わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女
わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女

女性が教育を受ける権利を訴えて、イスラム武装勢力に銃撃された16歳の少女の手記。世界24ヵ国で翻訳の話題作! (「BOOK」データベースより)

 

訳しているのは面白い作品ばかり

『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』によると、金原瑞人氏は、というか翻訳家さんは「依頼されて翻訳」する場合と、「自分で海外作品を読んで翻訳」する場合があるらしく、海外作品を大量に読むのだとか。

金原氏の訳した本には結構あたりが多いように思います。その証拠、ではないですが、Amazonで「金原瑞人」と検索すると、レビューの評価が平均的に高いです。

私はまだ未読なのですが、有名だなあと思う評価の高い本を挙げていくと、こんな感じになります。

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち<上>

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち<上>

フロリダに住む孤独な少年ジェイコブ。彼の唯一の理解者が、古い写真とともに「おとぎ話」を聞かせてくれた祖父だった。ある日、祖父が「何か」に襲われ、凄惨な死を遂げる。ジェイコブは彼の最期の言葉に従い、ウェールズの島を訪れる。そこには「おとぎ話」通りに“同じ時間”を生きる奇妙なこどもたちと不思議な女性ミス・ペレグリンがいた。(「BOOK」データベースより)

 

青空のむこう

青空のむこう

ぼくはまだ決めかねてた。アーサーはぼくに背中をむけて歩きだした。そのとたん、エギーやママやパパや友だち、ぼくが知ってる人たちの顔が次々に浮かんで、どうしてももう一度会いたくなった。みんながいなきゃ生きていけない。死んでることだってできない。すぐにぼくは決心した。アーサーの後を追いながら呼びかけた。「待って、アーサー。ぼくも行く」アーサーは立ち止まってぼくを待った。それからふたりで駆けだした。“生者の国”を目指して―。 (「BOOK」データベースより)

 

翻訳家の仕事についてつづったエッセイ

 『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』は、金原氏が、どう翻訳家になるのに至ったか、そして翻訳家になってからの仕事についてつづったエッセイです。

江國香織との対談、古橋秀之秋山瑞人との鼎談を含む、著者初のエッセイ集。翻訳の悦びと悩ましさ、世界文学との出会いから、青春時代の思い出まで。 (「BOOK」データベースより)

タイトルに「カレー屋になるはずだった」とありますが、カレー屋の話はほとんど出てきません。おいしい話を期待して読んではいけません。

しかし、翻訳家の日々の悩みとか苦労とか達成感とか、興味深い話がたくさん出てきます。例えば、邦題のつけ方に悩む、とか、I(アイ。英語で私)をどう訳すか、とか。

普段からことばの解釈と使い方に悩む仕事をされている方なので、これだけ面白いものが書けるんだろうなあ、とも思います。

 

スゴイ選「本」眼

  普段から大量の海外作品を読み、訳す本を選別されているせいか、金原氏は、すごい選球眼ならぬ選「本」眼を持ってらっしゃるんですよね。そしてその選本眼を活かして、書評家としても活動されています。

今も、かもしれませんが、私が小学生の時、『朝日小学生新聞』でブックレビューのコーナーを書いていらっしゃいました。私は片っ端から紹介された本を乱読していましたが、金原氏が紹介されてて、面白くなかった、と思った本はなかったように記憶しています。

特に記憶に残っているのは、この本。

アライバル

アライバル

新たな土地に移民した者が、その土地で生まれ変わり、新生児のように成長していく。そこには過去の自分を捨てなければならない辛さと、新しい人生を歩むチャンスを手にした幸せとの両面がある。それをまるでサイレント映画のように一切の文字を使用せず表現した、究極の文字なし絵本。 (「BOOK」データベースより)

一時期話題になったので知っている方も多いかもしれません。
でも、話題になるちょっと前に金原氏はこの本を推していたように記憶しています。私が、金原氏が薦められた本を積極的に読み始めたのはこの本がきっかけです。

 

YAというジャンルを日本に定着させるのに一役買った人

 YAというジャンルがあります。ヤングアダルト(Young:若い、Adult:大人)の略です。つまりは若い人向けのジャンル。ヤングアダルト出版会のサイトには、こう説明されています。

 アメリカで13歳から19歳の世代の人たちに対して使われている言葉で、「若いおとな」という意味です。この年代は、心の揺れ動きがもっとも激しい時期。まさに「読書」がいちばん必要なときといえるでしょう。

参考:ヤングアダルト出版会(YA) | 中学校・高等学校・公共図書館、選書利用率No.1

 

著名な作家さんでいうと、あさのあつこ先生や森絵都先生、あと、はやみねかおる先生とかがあえて「YA」を意識して書いていらっしゃいます。「児童文学」と「文学」の橋渡しをする作品群と考えていただくと想像しやすいかなと思います。

で、その「YA」の普及に一役買ったのが金原氏です。今はヤングアダルトのコーナーが書店に設けられていますが、金原氏は、それがなかった時代からこの言葉を積極的に使って本を紹介し、若い人の間に広めました。

そして私は、そのジャンルを読んで育った世代です。

 

金原氏監修の読書案内

 そんな金原氏が監修をした読書案内がこちら。

12歳からの読書案内

12歳からの読書案内

 

この時期に本を読むと子どもは一生、本好きになる!いま最も楽しい、元気の出る本を100冊紹介。 (「BOOK」データベースより)

 

これは大人が読んでも面白い本がそろっています。大人が「読ませたい」本ではなく、若者が「読みたい」本がそろっているのが特徴。Amazonのレビューは低いのもあるんですが、なんか悪意めいたものを感じるし、私はいい本ばかりセレクトしていると思うので、ぜひ本屋で手に取って読んでみてください。おすすめです。

 

まとめ

今回は趣向を変えて、金原瑞人という「人」を紹介してみました。

金原氏が書いた本、訳した本を読んでいると、私たちが読んでる本は大海の一滴に過ぎず、本の世界はまだまだ深く広いんだなあということを実感でき、視野が少し広くなります。 まずは『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』から手に取ってみてください。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

kazu